星の記録

天体撮影日記

春の銀河祭り2021 その6 NGC3718

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NGC3718(Arp214)/NGC3729/HCG56

OM-D E-M1 MarkIII ISO200 New FD 500mm F4.5L(1000mm相当) スカイメモS 露出10秒329枚コンポジット(総露出時間55分)トリミング
低感度コンポジットを試してみた結果第2弾です

前回はフルサイズのD810A、今回はマイクロフォーサーズのE-M1IIIでどうなるかなというテストでしたが、結果的にはD810Aと遜色ないデータになりました(びっくり)
まぁコンポジットの枚数は増やしましたが一枚当たりの露出時間はたったの10秒に設定…無謀だと思いましたが背景の色被りも画像処理とトリミングで何とかなる(?)レベルでした
星は流れましたが星雲は解像してくれています
やっぱり淡い対象は多数枚コンポジット最強です☆

ただ露出10秒でも流れるものは流れるしメインの星雲にはあまり影響が無いということで、15秒か20秒でも良かったのかなと思いました
(写真の出来としては流したくないですが…)

今回の被写体はこの春にメインで挑んでいた対象のNGC3718(Arp214)です
中心核の右側には16分音符を裏返したようなかぎ爪の形の細い腕が、左側はゆるく180度以上カーブした太めの腕があり、中心部分をS字状に暗黒帯が横切るなど、通常の渦巻銀河とは全く異なる形状をしている特異銀河です

右上に写っているNGC3729と過去にすれ違った時にお互いの重力で変形したと考えられています

北斗七星の柄杓のすぐ近くにあり天頂近くまで高く昇るため、撮影条件としてはかなり良い銀河です
視直径は長径9分角で明るさは10.5等ですが中心核のみが明るく、腕の部分は非常に淡いため、全体を写すには触角銀河のアンテナより数段難しい感じで、
なんとか腕も写りましたが満足するレベルでは写せませんでした

NGC3729も特異な形状で、リング状の構造の中に大小2つの明るい点があり、右上側にも微かな点状の構造が見えます
こちらは12等です

また、NGC3718の左側には5個の小さな銀河がくっつくように並んでいて、ヒクソン・コンパクト銀河グループ56(HCG56)という番号がついています
15~17等と暗いですが写真写りは結構良いです

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NGC3718/NGC3729/HCG56

この中の17等の銀河"D"よりもNGC3718の腕は淡く、これは難物だと思いました

撮る前から薄々感じてましたが、大口径の望遠鏡が必要だなぁと思わせる被写体です
それだけにカメラレンズとポタ赤ではなかなかチャレンジングでした(^^;
楽しかったですw

あと、SI9でのコンポジット後の画像処理で、レベル調整で階調を切り詰める際にアンダー側を切り詰めすぎると背景に縮緬模様が出てしまう事があります

ダークで減算すると良いのかもしれませんが、どうせその後の強調処理で黒は黒に近づけるので余裕を持ってカットしてみたところ、縮緬ノイズは出なくなりました
(間違っているかもしれませんし今後の処理過程でどうなるか未知数ですが…)

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背景のレベル調整失敗のせい?

春の銀河祭り2021 その5 しし座の三つ子銀河

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しし座の三つ子銀河M65/M66/NGC3628

Nikon D810A Reflex-Nikkor 1000mm F11 ISO12800 露出20秒74枚コンポジット
しし座の後脚の付け根に9.0等、9.3等、9.5等と同じくらいの大きさと明るさの銀河が三つ集まっていて人気の場所です
しし座の三つ子銀河とかトリプレットとかトリオ銀河とも呼ばれています

左端NGC3628から下(南側)に薄く伸びるガスが有るようなのですが、とても淡いので写せていません
まぁたったの25分露出ですからね(^^;
来年の目標のひとつです

この日はD810Aで反射レンズの1000mmを使えるのかどうかを検証しに行くのも目的でした

ファインダーではまず星が見えないのでライブビューで果たして導入と構図調整やピント合わせができるのか不安でしたが、
予想外に明るめの星がライブビューで確認でき、ISOを拡張感度まで上げて試し撮りすれば、星の配置やピントの確認は思っていたよりも容易でした

ピントの調整も思っていたよりスムーズで、試し撮り3回くらいでまずまず追い込めました

あとはパーマセルテープでレンズのピントリングを固定してひたすら連写…
30秒以上の露出だとスカイメモSの追尾精度では星が動いてしまうので、長焦点の場合は10秒から20秒の間で撮る感じにしたところ歩留まりが上がって来ました

ただし短時間露出だとバイアスノイズというか背景に色被りが出てしまい後処理で画質低下に繋がるため、できればダークとフラットを取得するのが望ましいのかなと思っていますが、まだ星を点として写せていない状況ですので露出時間の確保とガイドの安定化が優先事項かなと考えています

でもまぁISO12800でもかなり色被りが少ないD810A…凄いですね(^^;

春の銀河祭り2021 その4 M81/M82

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おおぐま座の端正な渦巻銀河のM81と特異銀河のM82のコンビは春の代名詞的な存在 画面下にNGC3077

OM-D E-M1X+M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO ISO200 露出60秒x4枚

春になると天高く昇る北斗七星の柄杓のすぐ脇に有る春を代表する銀河と言えばM81(6.9等:視直径26分角)とM82(8.4等:視直径11分角)のコンビを挙げる人は多いと思います

空が非常に暗い観測地では肉眼でも見える人がいるくらい明るく大きな銀河で、写真の被写体としても大変好都合です

ただし時間帯によってはほとんど天頂に位置し、カメラの視野に入れるのに苦労するのである程度低いうちに視野に入れておくことをお勧めします(←それ自分だけでは…)

M81の近くにはNGC3077やNGC2976も有り、アクセントとして一緒に写すと面白いかもしれません
特にNGC3077は腕や暗黒帯も写りやすいのでこの辺りを写す時のボーナス的な感じがします

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M81とM82

OM-D E-M1 MarkIII+M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO+MC-20 ISO200 露出30秒x175枚
アップを狙ったけどピンボケ失敗写真なので来年リベンジです

背景がマゼンタ被写体が緑がかってますけど、低感度コンポジットを試してみた結果、
コンポジット前提であっても1枚で被写体と背景が明確に分離できるくらいの明るさで写っていないとカラーバランスが保てないように思えます

以降ISOは高めで撮るようにしています
高感度ノイズはコンポジットで消えてくれることが多いので…

春の銀河祭り2021 その3 触角銀河NGC4038/NGC4039 Part3 および周辺の銀河

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銀河の色を出してみました

触角銀河NGC4038/NGC4039は色も対比的で4038は緑っぽい青?で4039は黄色っぽく見えます
元々は両方とも渦巻銀河だったっぽいですがお互いの重力で変形しているため不定形の特異銀河になっていますが、数億年後には合体してひとつの銀河になるようです


さて触角銀河の近くにはもうひとつ特異銀河があります

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NGC4027/NGC4027A

NGC4027は11等と触角銀河と同じくらいの明るさで指輪か勾玉のような形にも見えますが、渦巻銀河の腕が通常2本有るところ1本しかないもののようです

右下に淡い千切れ雲のように見えるのがNGC4027Aで、他の銀河との衝突の結果このような形になったのではないかと考えられています
良く見ると4027Aの左側にさらに淡い塊が2個(PGC856737/PGC856913)有りますがこれも4027の一部だったのでしょうか

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NGC3981

さらに西側(右側)に端正な形状のNGC3981が有ります
こちらは12等とやや暗いですが綺麗な渦巻銀河です

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NGC3957

NGC3981の北側にNGC3957(IC2965)が有ります
こちらはさらに暗い13等ですが綺麗な紡錘状の銀河です

この付近にはさらに15~17等の銀河が沢山有り、からす座銀河団ともNGC4038グループとも呼ばれています
比較的導入し易い銀河団ですので一網打尽で狙ってみるのも面白いかもしれません

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PGC37712/PGC37707
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触角銀河周辺

春の銀河祭り2021 その2 触角銀河NGC4038/NGC4039 Part2

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触角銀河NGC4038/NGC4039

触角を判りやすくすると銀河本体が明るすぎて色が飛んでしまうのが難点といいますか
マスクすればいいんですけどね
当時の処理技術そのままで…(といっても今年の2月)


ファインディングチャート的に500mmの画角で明るめに処理してみました
触角銀河以外にも複数の銀河が写っていて、調べたら17等の銀河まで写っていました
(17等…よく考えるとすげぇな…)

Nikon D810A+SIGMA APO 500mm F4.5 EX DG HSM 露出20秒 ISO3200
ステライメージ9にて71枚をコンポジット

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500mmの画角での触角銀河(下の輝星は5.3等星HIP58587)

からす座γから西に、からす座δーγの延長線上をδーγ間と同じくらいの距離の付近を探すと写真中央の5.3等星が目立つので、その北側を写してみると視野に入ってる感じです

アンテナ部分は明るいところで13等くらい?
暗いところはこの写真では17等あたりまで写っているという感じでしょうか…


続きます